- 2018年12月27日
- 中部地方の結婚式事情
私の実家、出身は長野県長野市です。
長野県と一口に言っても面積も広く、地理的に近くても谷あいの地形で交流がとどまる、など土地により独自の風習やしきたりがそれぞれに残っています。
広い県内を、東、南、北、と真ん中の5つに分け、「信州」の意味で、北信、東信、中信、南信と呼んでいます。
婚約の「風呂敷」という儀式
このうち長野市は北信ですが、この地域では婚約に関して「風呂敷」という儀式があります。
およそ結婚を決めて、双方の両親にあらたまって顔合わせをするとき、男性がわの両親が本人を伴い、桐の箱入りの「風呂敷」と生菓子を持参して女性の家へあいさつに行きます。
結納より前の「確約」とでもいうのでしょうか、丁寧なしきたりだと言われています。
生菓子を持参、というのは日持ちがしませんので、口にできるうちにお返事を頂きたい、という無言のプレッシャーであり、生菓子の賞味期限とともに決断せよ、ということです。
この時の、おもてなしは結納と同様にお茶ではなく、桜茶です。
万が一、気乗りでないという場合(昔はお見合いが多かったせいですね)第三者を通して、風呂敷をお返しする、ということでした。
ですので、結婚に至るまでのステップとしてどこまで進んだかを話題にする際に、「風呂敷が入った(受け取った)」という言い方をします。
結納の儀式
風呂敷の次が結納です。
お見合いで結婚することが多かった時代にあっては、女性の立場を考え、本人の意思を確認したり、周囲のすすめに負けて不本意に決めることがないようにというセーフティネットの役割もあったのではないかと思います。
呉服屋さんは、専用の風呂敷が売れてうれしかったことでしょうし、和菓子屋さんもはりきってそのための生菓子をつくっていたのでしょうね。
その際に近所のお店であれば、あの家の娘さんはいいお話があるようだ、などとだんだん噂されていったのでしょうね。
現在80代の母の引き出しにはその風呂敷が箱に入ったまま大切に保管されています。
その風呂敷が実用的に使われるものではなく、鶴の模様が入った装飾品、という感じです。
現在、住んでいる上田市は東信という地域ですがそのようなしきたりはもともとありません。
信州の奥座敷、という地方ではこのように昔からのしきたりが多いようですが、だんだん東京に距離的に近い上田市では、比較すると冠婚葬祭全般に合理的になっているような印象を受けます。
ですので、結婚に関して長野県内でも「風呂敷?」ってすべての場所で行われている儀式ではありません。
男性だけが北信だと、相手側は「?」と思うし、女性が北信だとその親は「風呂敷はいつでしょうか?」と当然あるものとして以前は行き違いもあったようです。